詳しく説明しますので、お時間のない方は太字のところと動画だけでも見ていただけると幸いです。
椎間板ヘルニアを発症した90%以上の子は手術をする必要などなく、安静と薬のみで日常生活に支障のないレベルまで回復する病気です。しかし、逆の言い方をすると、ごく少数ですが手術をしなければよくならない子、手術をした方がいい子も存在します。また、適切なタイミングで手術を行わなければ手遅れになってしまうこともあるため注意が必要です。
当院では富山県内の病院さんだけでなく、長野県や愛知県などの病院さんからも椎間板ヘルニアの診断および治療の依頼が多数来ています。その中で実際に手術が必要であった子、手術などする必要がないと判断した子の一部を紹介いたします。
また、本当に椎間板ヘルニアなのかどうか、本当に手術が必要なのかどうか、ということはレントゲン検査では診断できず、脊髄造影検査またはMRI検査によってしか分かりません。(CT検査のみでは椎間板ヘルニアかどうか診断できません。)
赤い矢印上の白いラインが脊髄のアウトラインです。青色の矢印部で脊髄が押されて凹んでいるのが分かります。
青い矢印部で、飛び出た椎間板物質に押されて脊髄が圧迫されているため、神経が麻痺してなかなか治らない状態だと分かります。
残念ながら薬やレーザー、鍼灸ではこの物質を取り除くことはできません。
この様な場合にのみ手術を行い、脊髄を圧迫している椎間板物質を取り除く必要が出てきます。
頚椎椎間板ヘルニアを発症した富山市の前田サナちゃん(14歳ミニチュアダックス)
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胸腰椎椎間板ヘルニアを発症した富山市の藤井こうめちゃん(3歳フレンチブルドッグ)
また、排尿も麻痺しており、膀胱がパンパンになるとおしっこがあふれ出る状態であったため、お尻はただれてきていました。手術直前の動画です。
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胸腰椎椎間板ヘルニアを発症した射水市の筏くうちゃん(5歳ミニチュアダックス)
手術直前。起立することができず、両後肢とも完全に麻痺しています。
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胸腰椎椎間板ヘルニアを発症した砺波市の谷口アンディーちゃん(16歳ミニチュアダックス)
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胸腰椎椎間板ヘルニア(仮診断)を発症した射水市 の曽戸ななちゃん(9歳チワワ)
症状が軽く、悪化傾向もないことから、脊髄造影検査および手術をする必要はまだないと判断し、安静を指示しました。来院時の動画です。
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このように手術や特別な治療をしなくても90%以上の子はよくなります。
ただし、発症状況、症状、経過などからしっかり判断する必要があるため、必ず動物病院を受診することをおすすめします。
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頚椎椎間板ヘルニアを発症した射水市の金崎レディーちゃん(8歳ヨークシャーテリア)
頚椎椎間板ヘルニアを疑い、痛み止めなどを1カ月近く投与しましたが、 全く改善せず、痛みもさらにひどくなってきたため、手術を行いました。
1年程前に手術した子のため、飼い主様からいただいたデータを載せます。
首に激痛が走ることがあるため、頭を下げ、恐る恐る歩いています。目にも力がありません。
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椎間板ヘルニアはかなりの重症例であっても、足をつねって痛みを感じるうちに、適切なタイミングで適切な処置を行えばほぼ100%歩けるようになる疾患です。
手術を行う場合、両後肢を全く動かせず、足をつねっても痛みを感じない場合は2日以内。後肢を少しでも動かすことができる、または足をつねると明らかに痛みを感じる場合は10日以内。発症後これらの日数を過ぎると回復の確率が格段に下がっていきます。ただし、頚椎の椎間板ヘルニアでは手術のタイミングはあまり重要でなく、発症後1カ月以上経過した子でも回復する可能性は十分あります。
椎間板ヘルニアを発症した大多数の子は大変な治療を必要としません。しかし、この病気は適切なタイミングで適切な処置を行わなければ手遅れになってしまう非常に怖い病気でもあります。
より詳しい説明を希望される方には手術写真などもお見せしながら病態の説明などもいたします。
今まで椎間板ヘルニアの治療として、注射、レーザー、鍼灸、飲み薬、手術、安静、リハビリなどをしてきましたが、同じ椎間板ヘルニアでもどの段階でどの治療法を選択すればよいかは全然違います。
しっかりとした知識を持つことで、この病気に悩む子が少しでも少なくなれば幸いです。
ますだ動物病院 増田和明