椎間板ヘルニアになった子達
■椎間板ヘルニア(頚椎および胸腰椎)

詳しく説明しますので、お時間のない方は太字のところと動画だけでも見ていただけると幸いです。

椎間板ヘルニアを発症した90%以上の子は手術をする必要などなく、安静と薬のみで日常生活に支障のないレベルまで回復する病気です。しかし、逆の言い方をすると、ごく少数ですが手術をしなければよくならない子、手術をした方がいい子も存在します。また、適切なタイミングで手術を行わなければ手遅れになってしまうこともあるため注意が必要です。
当院では富山県内の病院さんだけでなく、長野県や愛知県などの病院さんからも椎間板ヘルニアの診断および治療の依頼が多数来ています。その中で実際に手術が必要であった子、手術などする必要がないと判断した子の一部を紹介いたします。

また、本当に椎間板ヘルニアなのかどうか、本当に手術が必要なのかどうか、ということはレントゲン検査では診断できず、脊髄造影検査またはMRI検査によってしか分かりません。(CT検査のみでは椎間板ヘルニアかどうか診断できません。)

■まずはレントゲン検査の写真と脊髄造影検査の写真を記載します。
(1)レントゲン写真を撮ると、この様に骨はよく分かりますが、脊髄は見えません。
(2)同じ子で脊髄造影検査(脊髄のアウトラインを映し出します)を行いレントゲン写真を撮ったものです。
赤い矢印上の白いラインが脊髄のアウトラインです。青色の矢印部で脊髄が押されて凹んでいるのが分かります。
青い矢印部で、飛び出た椎間板物質に押されて脊髄が圧迫されているため、神経が麻痺してなかなか治らない状態だと分かります。
残念ながら薬やレーザー、鍼灸ではこの物質を取り除くことはできません。
この様な場合にのみ手術を行い、脊髄を圧迫している椎間板物質を取り除く必要が出てきます。
■実際に椎間板ヘルニアを発症してしまった子達の動画です。(右の画像をクリックして下さい。動画がご覧いただけます。)

頚椎椎間板ヘルニアを発症した富山市の前田サナちゃん(14歳ミニチュアダックス)

3日程前から四肢がふらつくようになり、歩行が困難になってきたということでかかりつけ病院さんから当院を紹介していただきました。特に右前肢の麻痺が強く出ています。来院時(手術前)の動画です。
手術までの間にますます症状が進行し、起立できなくなってしまいました。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術直前には寝たきりになってしましました。
手術後1日目。起立歩行可能になりました。右前肢の麻痺はまだ残っています。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術後2日目。だいぶ元気になり、右前肢の麻痺もだいぶ改善してきました。
手術後6日目。ほぼ正常に回復して元気に退院しました。

胸腰椎椎間板ヘルニアを発症した富山市の藤井こうめちゃん(3歳フレンチブルドッグ)

今朝両後肢とも完全に麻痺しているのに気付いたということでかかりつけ病院さんから当院を紹介していただきました。すぐに手術をする決心はできないということで1日経過観察しましたが、全く改善傾向がみられなかったため、手遅れになる前に手術を行うことになりました。
また、排尿も麻痺しており、膀胱がパンパンになるとおしっこがあふれ出る状態であったため、お尻はただれてきていました。手術直前の動画です。
手術後3日目。数歩歩けるようになりました。排尿もできるようになりお尻もきれいになってきました

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術後2カ月の動画です。手術後1週間でしっかりと歩きだし、手術後2カ月目にはほぼ正常に回復しました。

胸腰椎椎間板ヘルニアを発症した射水市の筏くうちゃん(5歳ミニチュアダックス)

1週間程前にどこかを痛がり、動きたがらなかったが、徐々に改善してきていた。今朝から急に悪化し、歩けないことに気付いたということでかかりつけ病院さんから当院を紹介していただきました。
手術直前。起立することができず、両後肢とも完全に麻痺しています。
※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術後1日目。まだ起立できませんが、両後肢とも少し動かせるようになってきました。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術後2日目。数歩歩けるようになってきました。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術後2カ月の動画です。手術後1週間で歩様もしっかりしだし、手術後2カ月目にはほぼ正常に回復しました。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。

胸腰椎椎間板ヘルニアを発症した砺波市の谷口アンディーちゃん(16歳ミニチュアダックス)

4日前から両後肢が全く動かないということでかかりつけ病院さんから当院を紹介していただきました。手術直前の動画です。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術後1日目。まだ後肢は動きませんが、元気に尻尾は振れるようになりました。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術後6日目。手術後5日目からだいぶ歩けるようになってきました。
手術後10日目。元気に走れるようになり、退院しました。

胸腰椎椎間板ヘルニア(仮診断)を発症した射水市 の曽戸ななちゃん(9歳チワワ)

2~3日程前から動きたがらない。右後肢にあまり力が入らないということでかかりつけ病院さんから当院を紹介していただきました。
症状が軽く、悪化傾向もないことから、脊髄造影検査および手術をする必要はまだないと判断し、安静を指示しました。来院時の動画です。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
3日後。活動性がでてきました。右後肢の麻痺も少し改善してきています。痛みもないとのことですので安静を指示してこのまま経過観察としました。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
6日後。右後肢の麻痺も改善され、ほぼ正常に回復しました。
このように手術や特別な治療をしなくても90%以上の子はよくなります。
ただし、発症状況、症状、経過などからしっかり判断する必要があるため、必ず動物病院を受診することをおすすめします。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。

頚椎椎間板ヘルニアを発症した射水市の金崎レディーちゃん(8歳ヨークシャーテリア)

あまり動きたがらず、突然ギャンギャン痛がることがあるとのことで来院されました。
頚椎椎間板ヘルニアを疑い、痛み止めなどを1カ月近く投与しましたが、 全く改善せず、痛みもさらにひどくなってきたため、手術を行いました。
1年程前に手術した子のため、飼い主様からいただいたデータを載せます。
首に激痛が走ることがあるため、頭を下げ、恐る恐る歩いています。目にも力がありません。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。
手術後、痛みもなくなり、明るい表情になりました。


術後数日で痛みも完全に消え、今では元気に走り回っています。

※右の画像をクリックして下さい。YouTubeで動画がご覧いただけます。

椎間板ヘルニアはかなりの重症例であっても、足をつねって痛みを感じるうちに、適切なタイミングで適切な処置を行えばほぼ100%歩けるようになる疾患です。
手術を行う場合、両後肢を全く動かせず、足をつねっても痛みを感じない場合は2日以内。後肢を少しでも動かすことができる、または足をつねると明らかに痛みを感じる場合は10日以内。発症後これらの日数を過ぎると回復の確率が格段に下がっていきます。ただし、頚椎の椎間板ヘルニアでは手術のタイミングはあまり重要でなく、発症後1カ月以上経過した子でも回復する可能性は十分あります。
椎間板ヘルニアを発症した大多数の子は大変な治療を必要としません。しかし、この病気は適切なタイミングで適切な処置を行わなければ手遅れになってしまう非常に怖い病気でもあります。
より詳しい説明を希望される方には手術写真などもお見せしながら病態の説明などもいたします。

今まで椎間板ヘルニアの治療として、注射、レーザー、鍼灸、飲み薬、手術、安静、リハビリなどをしてきましたが、同じ椎間板ヘルニアでもどの段階でどの治療法を選択すればよいかは全然違います。
しっかりとした知識を持つことで、この病気に悩む子が少しでも少なくなれば幸いです。

ますだ動物病院 増田和明